台風シーズンの9月です。水没した車の記事を書いていて一番よく届く感想が、「読んだときにはもう遅かった」というものでした。水没・冠水の被害は、起きてしまうと個人にできることがほとんど残りません。効くのは、来る前の数日にやる数個の準備だけです。
この記事では、台風・大雨が来る前に車の所有者がやっておくことを7つのチェックリストに整理しました。判断の根拠は気象庁の警戒レベル、国土交通省の冠水時の注意喚起、JAF「台風・大雨時のクルマに関する注意点」、日本損害保険協会の補償の説明という公的な一次情報に置いています。KINTOなどのカーリース契約中の車はどう扱われるのかも、公式規約とFAQで確認した内容を後半にまとめました。
1. 結論:台風の前にやること7つ(時系列チェックリスト)
先に全体像です。やることは「早いほど選択肢が多い」順に並んでいます。台風が近づいてからできるのは、実質的に下の2つだけになります。
| いつ | やること | 目安時間 |
|---|---|---|
| 3日前まで (進路予報が出たら) | ① ハザードマップで駐車場所が浸水想定区域か確認する | 5分 |
| ② 車両保険の有無と免責金額を保険証券で確認する | 10分 | |
| ③ 契約書類・事故受付の電話番号を手元に出す | 5分 | |
| 前日まで | ④ 車内・トランクに防災用品を積む | 20分 |
| ⑤ 燃料・充電を早めに満たしておく | 15分 | |
| 警戒レベル3まで (高齢者等避難) | ⑥ 危ない場所に停めているなら、この段階で移動させる | 30分〜 |
| 通過後 | ⑦ 浸水していたら「エンジンをかけない」を守る | — |
この記事の残りは、この7つを1つずつ「なぜそれをやるのか」「根拠は何か」の順で説明していきます。急いでいる方は、② 駐車場所と③ 車両保険だけ読んでも構いません。被害額に一番効くのはこの2つです。
2. ① 駐車場所——「どこに停めるか」で結果がほぼ決まる
台風・大雨の被害で、個人が事前にコントロールできる最大の変数が駐車場所です。JAFは台風・大雨時の注意点として、「市区町村が作成している『ハザードマップ』を活用して、危険箇所を確認しておきましょう」と案内しています。
ハザードマップは、国土交通省のハザードマップポータルサイトから、住所を入れるだけで「洪水浸水想定区域」「土砂災害警戒区域」「高潮浸水想定区域」を重ねて見られます。見るべきは自宅ではなく「車を停めている場所」です。自宅は2階があっても、駐車場は地面の高さしかありません。
危ない場所・比較的安全な場所
| 避けたい場所 | 理由 |
|---|---|
| アンダーパス・高架下・立体交差の下 | JAFは「高架下や立体交差のアンダーパスなど周囲より低い場所には絶対に進入せず、迂回しましょう」と明記。停める場所としても最悪 |
| 川沿い・海岸沿い・急傾斜地 | JAFが「危険な場所には近づかないようにしましょう」として挙げている場所 |
| 地下駐車場・半地下 | 水は低い方へ集まる。出入口が冠水すると車も人も出られなくなる |
| 大きな木・看板・仮設物の近く | 強風での倒木・飛来物。車両保険の対象にはなるが、修理期間は戻ってこない |
| 比較的安全な場所 | 注意点 |
|---|---|
| 立体駐車場・商業施設の上層階 | 1階部分は浸水する。上の階を確保できるかが条件。台風前は満車になりやすいので早めに |
| 浸水想定区域外の高台 | 移動する道中が冠水する前に動くこと(→警戒レベル3まで) |
| 周囲に飛ぶものがない屋内車庫 | 浸水想定区域内なら意味がない。ハザードマップで先に確認 |
なお、自治体によっては台風接近時に公共施設の駐車場や高台の駐車場を「車両避難場所」として一時開放することがあります。お住まいの市区町村のサイトや防災メールで案内されるので、進路予報が出た段階で確認しておくと選択肢が増えます(実施の有無・条件は自治体によって異なります)。
3. ② 車を動かすなら「警戒レベル3」まで——動かす判断のタイムリミット
駐車場所を変えると決めたら、次は「いつ動かすか」です。ここを外すと、避難させようとした移動そのものが危険になります。JAFは「水位が上がってからの自動車避難は大変危険なため、控えましょう」とはっきり書いています。
タイミングの物差しになるのが、気象庁の警戒レベルです。避難情報と防災気象情報が5段階でそろえられています。
| 警戒レベル | 気象庁の説明(住民が取るべき行動) | 車についての判断 |
|---|---|---|
| レベル1 早期注意情報 | 「最新の防災気象情報等に留意するなど、災害への心構えを高めて」 | ハザードマップと保険証券を確認する |
| レベル2 注意報・キキクル「注意」(黄) | 「ハザードマップ等により、災害が想定されている区域や避難先、避難経路を確認」 | 移動先の駐車場を決めておく |
| レベル3 警報・キキクル「警戒」(赤) | 高齢者等は危険な場所からの避難が必要。「高齢者等以外の方も普段の行動を見合わせ始めたり、避難の準備をしたり自ら避難の判断」 | 車を動かすならここが実質的な期限 |
| レベル4 危険警報・キキクル「危険」(紫) | 危険な場所からの避難が必要。「避難指示が発令されていなくても自ら避難の判断」 | 人の避難が最優先。車は諦める |
| レベル5 特別警報・キキクル「災害切迫」(黒) | 「何らかの災害がすでに発生している可能性が極めて高い状況」/「直ちに身の安全を確保」 | 外に出ない |
レベル4は「危険な場所から人が避難する」段階です。この段階で車の心配をして外に出るのは順序が逆になります。車の移動はレベル3までに終わらせる、それを過ぎたら車は保険と補償の問題に切り替える——この線引きを事前に決めておくのが、いちばん実用的な備えです。
冠水した道路は「浅く見えても」入らない
移動中に冠水路に出くわしたときの判断材料として、JAFが公表しているテスト結果を挙げておきます。
| 水深 | 速度 | 結果 |
|---|---|---|
| 30cm | 時速10km | フロントグリル部分から直接水が入ることなく走行できた |
| 30cm | 時速30km | エンジンルームへ水が入った |
| 60cm | 時速10km | 31m地点でエンジンが停止 |
国土交通省も、水深が床面を超えると「車内に浸水して電気装置が故障するおそれや、マフラーから浸水してエンジンルームが損傷するおそれ」があり、ドアの下端にかかると「車外の水圧により内側からドアを開けることが困難」、ドア高さの半分を超えると「内側からほぼ開けられなくなります」としています。タイヤが完全に水没すると車体が浮いて移動が困難になるおそれもあります。
つまり「ゆっくり行けば抜けられる」が成立するのは水深30cmまでで、それも速度を落とした場合の話です。迂回すれば車も自分も無事です。
4. ③ 車両保険を確認する——付けていなければ台風被害は1円も出ない
台風で車が壊れたときにお金が戻るかどうかは、車両保険を付けているかどうかだけで決まります。対人賠償・対物賠償は相手への補償なので、自分の車の修理費は出ません。
日本損害保険協会は、「台風や洪水などの風水災等によって自動車が損害を被った場合に保険金が支払われます」としたうえで、「契約タイプによっては保険金が支払われないことがあります」と注意を添えています。
| 被害の原因 | 車両保険での扱い |
|---|---|
| 台風・洪水・高潮・大雨による水没 | 補償対象(一般型・エコノミー型のどちらでも対象とされるのが一般的。契約タイプにより例外あり) |
| 強風による飛来物・倒木での破損 | 風災として補償対象 |
| 地震・噴火・これらによる津波 | 補償されない。損保協会は「地震・噴火・津波による損害は補償されません。なお、これらの損害を補償する特約が用意されている場合があります」と明記 |
| 車両保険を付けていない場合 | いずれも自己負担 |
台風の前に確認すべきなのは、次の3点です。
- 車両保険が付いているか——保険証券の「車両」欄。付いていなければ台風被害は全額自己負担になります
- 免責金額(自己負担額)はいくらか——0円か5万円かで手元に残る額が変わります
- 使うと等級はどうなるか——台風・洪水などによる車両保険の使用は、一般に「1等級ダウン事故」に該当します。通常の事故(3等級ダウン)より影響は小さいものの、翌年の保険料は上がります
修理費が数万円なら、保険を使わず自己負担のほうが安く済むこともあります。金額を比べてから決めたい方は、等級ダウン費用シミュレーターで損益分岐を計算できます。
車両保険が付いていなかった/保険料が高いと感じた方へ
台風シーズンに入ってから車両保険を足すことはできますが、すでに発生した被害には遡って適用されません。更新月が近いなら、この機会に「車両保険あり」の条件で各社の保険料を比べておくと判断がしやすくなります。一括見積もりなら、車種と等級を入れるだけで複数社の金額を横並びで確認できます。
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5. ④⑤⑥ 書類・防災用品・燃料——前日までに済ませる3つ
④ 契約書類と連絡先を手元に出す
被害に遭った直後は、保険証券がどこにあるかを探すところから始まります。停電していれば、ネットで契約内容を確認することもできません。前日までに次のものを1か所にまとめ、スマートフォンでも撮影しておくと確実です。
- 保険証券(証券番号・事故受付の電話番号)
- 車検証(型式・登録番号)
- カーリース・KINTO契約の場合は契約者番号と事故受付センターの番号
- 被害前の車の写真(4方向+室内)——被害の程度を説明するときの比較材料になります
⑤ 車内・トランクに防災用品を積む
JAFは、道路が通行止めになって1〜2日車内で待機する場合に備えて、飲料・食料・防寒具・携帯トイレを積んでおくことを勧めています。夏場に日なたへ駐車すると車内は高温になるため、食品の保管には向かない点にも注意が必要です。
| 用途 | JAFが挙げている品目 |
|---|---|
| 車内で待機する(1〜2日) | 「飲料、食料、防寒具、携帯トイレ」/「非常用飲料水やロングライフ食品」 |
| 車を降りて徒歩で避難する | 「ポケットサイズのラジオ、懐中電灯、飲料(500ml×1本)、軍手」/「救急箱、レインコート」「アルミブランケット」 |
| 季節・人による追加 | 冬は「手袋や使い捨てカイロ」「寝袋や毛布」、初夏〜晩秋は虫よけスプレー。「予備のメガネや常備薬」、乳児がいれば「簡易おむつやパンツ、授乳用ケープやミルクセット、衣類」「液体ミルク」 |
⑥ 燃料・充電を早めに満たしておく
台風の前後は、給油所に列ができたり、停電で給油自体ができなくなったりします。避難や通行止めの迂回で走行距離が伸びること、渋滞や車内待機でアイドリング時間が伸びることを考えると、進路予報が出た段階で満たしておくほうが安全です。
電気自動車・PHEVも同じで、停電すると自宅では充電できません。逆に、外部給電に対応した車なら停電時に家電を動かす電源にもなりますので、満充電にしておく意味は大きくなります。
6. ⑦ 通過後——浸水していたら「エンジンをかけない」
台風が過ぎたあと、いちばんやってはいけないのが「動くか確かめるためにエンジンをかける」ことです。国土交通省は「水が引いた後も、エンジンをかけないでください」と明記しています。JAFも冠水した車について「いきなりエンジンキーを回さない、エンジンボタン(プッシュボタン)を押さない」としています。
理由は3つあります。①電装系がショートして被害が拡大する、②水が引いたあとに発火することがある(特に海水に浸かった場合)、③保険や補償の判断材料が壊れてしまう、です。

「かけてみないと壊れているか分からない」と思ってしまうところですが、逆です。かけた瞬間に「直せた車」が「直せない車」に変わります。判断はロードサービスと販売店に任せてください。
バッテリー端子の扱いについては公的機関の案内が分かれています。国土交通省は「発火するおそれがありますので、バッテリーの端子(マイナス側)を外してください」、JAFは台風・大雨のページで「ボンネットを開け、水に浸っているようであれば、バッテリーのマイナス側のターミナルをはずしてください」としている一方、質問箱では自分でバッテリーを外したりエンジンをかけたりせず相談するよう案内しています。作業に自信がなければ触らず、ロードサービスや販売店に相談するのが安全です。ハイブリッド車・EVの駆動用バッテリーまわりは、いずれの場合も自分で触ってはいけません。
浸水後の手順・保険の請求・修理か廃車かの判断は、車が水没したらどうなる?保険・廃車・NG行動にまとめてあります。実際に被害に遭ってしまった方はそちらをご覧ください。
7. KINTO・カーリース契約中の車が台風で被害を受けたら
「自分の所有物ではない車が壊れたらどうなるのか」は、リース契約者にとって台風前の最大の不安です。KINTOについては公式の利用規約とFAQで扱いが明示されています。
| ケース | 契約者の負担 |
|---|---|
| 台風・竜巻・雹・雪・洪水で全損 | なし(車両保険の対象) |
| 修理できる範囲の損害 | 車両保険の自己負担額(免責)=1事故あたり最大5万円(新車の場合。中古車のU35おてごろプランは最大10万円) |
| 地震・噴火・これらによる津波で全損 | 規定損害金を一括負担(車両保険の適用外。中途解約金は発生しません) |
KINTOは任意保険が月額に含まれているため、「そもそも車両保険を付けていなかった」という事態が起きません。台風・洪水で全損になっても契約者の負担は発生せず、修理できる範囲なら免責の上限までで収まります。例外は地震・噴火・津波だけで、この場合のみ規定損害金の負担が生じます。

私はKINTOで3台連続の契約中ですが、任意保険込みなので、台風のたびに「車両保険つけてたっけ」と証券を探さなくていいのは正直ありがたいです。ただし地震・津波だけは例外なので、そこは自分の車と同じように理解しておく必要があります。
台風の前にやっておくことは、自分で買った車と基本的に同じです。駐車場所の確認・レベル3までの移動・書類と連絡先の準備。加えてリース契約者は、事故受付センターの電話番号(KINTOの付帯保険は東京海上日動、事故受付センターは24時間365日受付)を控えておいてください。被害に遭ったとき、まず連絡するのはここです。
地震で全損した場合の規定損害金の具体的な計算は、KINTOは地震で全損したら?規定損害金を公式規約で解説で条文と算式を確認できます。KINTOの料金・保険・返却の全体像はKINTOの仕組みを図解にまとめました。
8. それでも被害に遭ってしまったら——修理か、手放すか
水没した車は、外から見て無事でも電装系・内装・下回りの腐食が後から出てきます。修理見積もりが車の価値を超えることも珍しくありません。保険で全損扱いになった場合や、修理を諦めた場合は、時間がたつほど価値が下がることだけ覚えておいてください(海水に浸かった車は特に腐食が早く進みます)。
「動かないから引き取ってもらえない」と思われがちですが、廃車買取の専門店なら動かない車・水没車も引き取りの対象で、レッカー代や書類代行費用はかからないのが一般的です。保険で全損扱いになった場合は、引き取り方法を保険会社と相談したうえで利用してください。
水没・冠水した車を処分するなら
廃車買取の専門店は、動かない車・水没車も0円以上で買取保証、レッカー代・書類代行費用は無料です。修理を諦めた車、保険で全損になった車は、腐食が進む前に査定に出しておくと選択肢が残ります。
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よくある質問
まとめ|台風の被害は「来る前の30分」で決まる
台風・大雨で車を守るためにできることを、もう一度短くまとめます。
- ハザードマップで駐車場所を確認する——見るのは自宅ではなく「車を停めている場所」
- 動かすなら警戒レベル3まで——JAFは「水位が上がってからの自動車避難は大変危険」としています。レベル4以降は人の避難が最優先
- 車両保険の有無と免責額を確認する——台風・洪水は補償対象、地震・噴火・津波は対象外
- 書類・防災用品・燃料は前日までに——停電すると契約内容も確認できなくなります
- 通過後に浸水していたら、エンジンをかけない——国交省もJAFも一致して警告しています
- KINTOなどのリース契約は任意保険込み——台風・洪水の全損は負担なし、修理は免責最大5万円まで。例外は地震・噴火・津波のみ

この記事で一番やってほしいのは、ハザードマップを開いて駐車場所を確認することです。5分で終わりますし、台風のたびに悩まなくて済むようになります。台風が来てから読み返す記事ではなく、来る前に一度だけ読む記事にしてください。
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※ 記事内のイラストは「いらすとや」の素材を使用しています。
※ 本記事の記載は、気象庁「警戒レベルとの対応」、国土交通省「水深が床面を超えたら、もう危険!」、JAF「台風・大雨時のクルマに関する注意点」、JAF クルマ何でも質問箱「車内に用意しておきたい防災用品とは?」、日本損害保険協会「風水雪災等による損害を補償する損害保険」、国土交通省ハザードマップポータルサイト(いずれも2026年9月5日確認)、およびKINTO利用規約・公式FAQ(当ブログで確認)にもとづきます。保険の補償内容は契約タイプ・保険会社により異なるため、実際の適用可否は必ずご加入の保険会社にご確認ください。避難の判断は、お住まいの自治体が発表する避難情報に従ってください。


















台風が来るまであと2日。車、いまの駐車場のままで大丈夫かな。どこかに避難させたほうがいい?そもそも保険って台風で出るんだっけ?