2026年8月13日、千葉県では記録的な大雨となり、千葉市には19時30分に大雨特別警報(警戒レベル5)が発表されました。千葉駅周辺や船橋市・柏市などで道路が広く冠水し、走行中に動かなくなった車が各地で立ち往生しています。
「水が引いたから、とりあえずエンジンをかけて動くか確かめよう」——これが一番やってはいけない行動です。
この記事では、水没・冠水した車が実際どうなるのかを、国土交通省・JAF・日本損害保険協会の公表内容にもとづいて整理します。最初にやるべきこと、保険で戻るお金、修理か廃車かの判断、そしてKINTOなどのリース契約中だった場合の扱いまで、順番に見ていきます。
1. 結論:水没した車で最初にやること・絶対にやらないこと
細かい話の前に、いま車が水に浸かっている(浸かった)方向けの結論です。
| やること | やってはいけないこと |
|---|---|
| 車から離れて安全を確保する | エンジンをかける |
| 保険会社の事故受付に連絡する | 自分で押したり牽引したりして動かす |
| ロードサービス・販売店に相談する | 駆動用バッテリーまわりを自分でさわる |
| 水位が分かる写真を撮っておく | 「動いたから大丈夫」と乗り続ける |
写真は保険金の請求で役に立ちます。どこまで水に浸かったかが分かる状態(ドアの水跡、室内の泥の高さ、周囲の冠水状況)を、動かす前に撮っておいてください。
バッテリーの端子は外すべき?——案内が分かれています
ここは正直にお伝えします。公的機関のあいだで案内が分かれています。
- 国土交通省:「水が引いた後も、エンジンをかけないでください。また、発火するおそれがありますので、バッテリーの端子(マイナス側)を外してください」
- JAF:自分でバッテリーを外したりエンジンをかけたりせず、動かす前にJAFや販売店に相談を、としています
発火を防ぐという目的は共通で、違うのは「自分でやるか、プロに任せるか」です。安全にマイナス端子だけを確実に外せる自信がなければ、触らずにロードサービスを呼ぶほうが確実です。とくに電気自動車・ハイブリッド車は高電圧の駆動用バッテリーを積んでいるため、国土交通省も「自分で対処せず、自動車整備工場等にご相談ください」としています。

私も自損事故のときに痛感しましたが、慌てて自分でどうにかしようとすると被害が広がります。まず連絡、動かすのはそのあとです。
2. なぜエンジンをかけてはいけないのか
理由は大きく3つあります。
① 破損と感電のおそれがある
JAFは「水が引いたからといって、自動車に乗り込みエンジンを掛けると破損や感電の危険がありますので、絶対にやめてください」と明確に注意喚起しています。国土交通省も、水深が床面を超えると車内に浸水して電気装置が故障するおそれがあるとしています。一度水を吸った状態で通電させることが、被害を広げます。
② 海水は「水が引いたあと」に発火することがある
これは見落とされがちな点です。JAFによれば、海水に浸かった場合は水が引いた後でも、海水によって電気系統の腐食が進むことでショートし、自然に発火してしまうことがあります。高潮や河川の氾濫で海水が混じった地域では、見た目が乾いていても安心できません。
③ 保険や補償の判断材料が壊れる
自分で動かした結果として損傷が広がると、どこまでが水没による損害なのかの切り分けが難しくなります。保険を使う前提なら、状態を保ったまま保険会社と整備工場に見てもらうのが結果的に得です。
3. 水深でどこまで危ないのか(国交省の目安とJAFの実験)
国土交通省は「水深が床面を超えたら、もう危険!」という注意喚起(令和元年11月27日発表)で、水深ごとに何が起きるかを示しています。
| 水深の目安 | 起きること |
|---|---|
| 車の床面を超える | 車内に浸水して電気装置が故障するおそれ |
| ドアの下端に達する | 車外の水圧により、内側からドアを開けることが困難 |
| ドアの高さの半分を超える | 内側からほぼ開けられなくなる |
| タイヤが完全に水没 | 車体が浮いて移動が困難になるおそれ |
あわせて、冠水路に進入すると自動スライドドアやパワーウインドウが動作しなくなることや、エンジン・モーターが停止して再始動できなくなることも示されています。「窓から出ればいい」という発想が通用しない可能性がある、ということです。
「EVなら平気」は成り立たない——JAFの冠水路走行テスト
JAFは2024年10月28日〜30日に、EV・ハイブリッド車・ガソリン車(軽自動車)で冠水路の走行テストを実施しています。
| 条件 | 結果 |
|---|---|
| 水深30cm・時速10km | 全車種が走り切れた |
| 水深30cm・時速30km | 全車種走り切れたが、車体下部パーツの脱落・ボンネット内への浸水・車内浸水などが発生 |
| 水深60cm・時速10km | 全車種走行可能(ガソリン車はエアクリーナー部分が湿潤) |
| 水深60cm・時速30km | EV・HVは走破したが警告灯が点灯/ガソリン車は大量浸水 |
| 水深60cm・時速40km | EV・HVは走破したが警告灯が点灯/ガソリン車は28.5m地点で停止・浸水 |
ガソリン車より電動車のほうが走破性は高い結果ですが、走り切れたEV・HVでも警告灯が複数点灯しています。「エンジンがないから水に強い」と考えて進入するのは危険だ、というのがJAFの結論です。
そもそも実際の冠水路は水が濁っていて深さが見えず、マンホールが開いていたり見えない側溝があったりします。JAFは浅く見えても進入は大変危険として、迂回を推奨しています。

通り抜けられそうに見えたんだけど…そもそも入らないのが正解だったのか。
4. 保険は出る?車両保険での水没の扱い
ここが一番気になるところだと思います。結論から言うと、車両保険を付けているかどうかがすべてです。
台風・洪水・高潮による水没は車両保険の対象
日本損害保険協会は、任意の自動車保険に車両保険を付けていれば「台風や洪水などの風水災等によって自動車が損害を被った場合に保険金が支払われます」としています。
車両保険には補償範囲の広い「一般型」と、範囲を絞った「エコノミー型(車対車+A)」がありますが、水害はどちらのタイプでも補償対象とされるのが一般的です。ただし損保協会も「契約タイプによっては保険金が支払われないことがあります」と注意しているとおり、最終的には保険証券と保険会社への確認が必要です。
逆に言えば、車両保険を付けていない場合、自分の車の修理費は1円も出ません。対人賠償・対物賠償は「相手」への補償なので、自分の車には使えません。
地震・噴火・津波による水没だけは対象外
⚠️ 同じ「水に浸かった」でも原因で扱いが正反対になります
日本損害保険協会は「地震・噴火・津波による損害は補償されません」と明記しています。大雨や台風による洪水は補償され、地震にともなう津波で水没した場合は補償されない、という線引きです。これらを補償する特約が用意されている場合があるので、加入先に確認してください。
車両保険を使うと等級は「1等級ダウン」
台風・洪水・高潮などで車両保険を使った場合は、一般的に「1等級ダウン事故」に該当し、翌年の等級が1等級下がります。通常の事故(3等級ダウン事故)にくらべれば影響は小さいものの、無事故だった場合と比べれば保険料は上がります。
修理費が数万円程度なら、保険を使わず自己負担にしたほうが総額で安く済むこともあります。判断の手順は保険を使うか自腹で修理するかを判断する6ステップにまとめてあります。実際に何円損得が出るかは等級ダウン費用シミュレーターで試算できます。
🛡️ 「自分の車、車両保険は付いていたっけ?」
水没で費用が戻るかどうかは、車両保険を付けているかどうかがすべてです。対人・対物だけでは自分の車は1円も直りません。付いていなかった方・保険料が高くて外していた方は、この機会に条件を見直す価値があります。インズウェブの自動車保険一括見積もりなら最短5分・最大20社を無料で比較できます。
※ 一括見積もりサービス(インズウェブ)へのリンクです。特定の保険会社をおすすめするものではありません。
5. 修理か廃車か——水没車の分かれ目
水没した車は、大きく2つの道に分かれます。
| 修理して乗る | 全損・手放す | |
|---|---|---|
| 目安 | 浸水が床面より下にとどまり、電装系に異常がない | 修理費が車両保険金額(車の時価)を上回る=経済的全損 |
| 保険の扱い | 修理費が支払われる(免責金額は自己負担) | 車両保険金額が支払われる |
| 注意点 | あとから電装系の不具合が出ることがある | 車両の引き取り方法を保険会社と相談する |
室内のフロアまで水が入った車は、シート下の配線やコンピューター、コネクター類まで水と泥をかぶっています。いったん動いても、後日になって電装系の不具合が出ることがあるのが水没車の厄介なところです。修理する場合は、どこまで手を入れたのかを整備工場に明細で出してもらってください。

直して乗れると言われたけど、半年後にパワーウインドウとナビが立て続けに壊れて結局買い替えました。
全損になった場合や、修理費が高すぎて手放すと決めた場合は、廃車買取という選択肢があります。水没車は一般の中古車買取店では断られることが多い一方、廃車買取の専門業者なら引き取り対象になります。
🚨 全損・修理不能でも「0円以上」で引き取ってもらえる
水没車は一般の中古車買取では断られがちですが、廃車買取専門店なら動かない車・水没車も引き取り対象です。レッカー代・書類代行費用すべて無料なので、自走できない状態でも自己負担なしで処分できます。保険で全損になった場合も、車両の引き取り方法は保険会社と相談のうえで決めてください。
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事故・故障・廃車まで含めた判断の全体像は車の事故・トラブル完全対応ガイドにまとめています。
6. KINTO契約中の車が水没したらどうなる?
当ブログはKINTO(トヨタの車のサブスク)契約者が書いているので、リース中の車が水没した場合についても触れておきます。
結論として、台風・洪水による水没は車両保険の対象なので、契約者の追加負担は発生しません。KINTOは任意保険が月額に含まれており、公式FAQでもカバーされる災害として「台風・竜巻等の強風・雹・雪・洪水など」が挙げられています。
| ケース | 契約者の負担 |
|---|---|
| 洪水・台風で全損になった | なし(車両保険の対象。違約金なしで中途解約) |
| 浸水したが修理可能 | 車両保険の自己負担額(1事故あたり最大5万円) |
| 地震・噴火・これらによる津波で全損 | 規定損害金を一括負担(車両保険の適用外) |
くり返しになりますが、線引きは「大雨・洪水なら負担なし/地震・津波なら自己負担」です。地震・噴火・津波のケースだけは規定損害金という高額の負担が発生するので、KINTOは地震で全損したら?規定損害金を公式規約で解説で算式まで確認しておいてください。
KINTOの保険引受は東京海上日動で、事故受付センター(0120-137-160)が24時間365日対応しています。水没した場合も、自分で動かす前にまずここへ連絡してください。契約中に廃車になったときの流れはKINTO契約中に事故で廃車になっても費用の心配がない3つの理由で解説しています。

任意保険込みの安心感が一番効いてくるのが、こういう災害のときですね。ただし地震・津波だけは例外、というのは知っておいてほしいです。
7. 次の豪雨に備えて、いまやっておけること
水没は「起きてから保険に入る」ことができません。まだ被害に遭っていない方は、次の3つを確認しておいてください。
- 車両保険を付けているか——付けていなければ水没の修理費は出ません。保険証券で確認できます
- 免責金額(自己負担額)はいくらか——0円か5万円かで、手元に残る額が変わります
- 駐車場所が浸水想定区域か——自治体のハザードマップで確認できます。大雨の予報が出たら高台や立体駐車場へ移動させる判断材料になります
そして最後にもう一度——冠水した道路には入らないこと。JAFのテストが示すとおり、水深60cmではガソリン車は途中で止まります。迂回すれば車も自分も無事です。
🔁 次の豪雨が来る前に、車両保険の中身を確認しておく
水没は「起きてから入る」ことができません。車両保険を外している方、免責金額を高く設定している方は、いま一度どこまで補償されるかを確認しておいてください。同じ補償内容でも会社によって保険料は大きく変わるため、比較すれば補償を厚くしても総額が下がることがあります。
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よくある質問
まとめ|水没車は「動かさない・つながない・すぐ相談」
この記事の要点をまとめます。
- エンジンをかけない。破損・感電のおそれがあり、海水なら後日発火することもある
- 水深が床面を超えたら電装系が危険、ドア下端でドアが開きにくくなる(国土交通省)
- EV・HVでも冠水路は危険。水深60cmでは警告灯が点灯した(JAFテスト)
- 台風・洪水による水没は車両保険の対象。ただし地震・噴火・津波は対象外
- 車両保険を使うと一般的に1等級ダウン。少額なら自己負担のほうが得なこともある
- 全損・修理不能でも廃車買取なら引き取ってもらえる
- KINTO契約車は洪水なら負担なし、修理可能なら免責最大5万円、地震・津波だけは規定損害金
被害に遭われた方が、少しでも損をせずに次の一歩へ進めることを願っています。
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※ 記事内のイラストは「いらすとや」の素材を使用しています。
※ 本記事の記載は、国土交通省「水深が床面を超えたら、もう危険!」、JAF「自動車が冠水路や高潮で浸水してしまったら?」および「冠水路走行テスト」、日本損害保険協会「風水雪災等による損害を補償する損害保険」、千葉市の気象警報発表情報(いずれも2026年8月14日確認)にもとづきます。保険の補償内容は契約タイプ・保険会社により異なるため、実際の適用可否は必ずご加入の保険会社にご確認ください。















水没した車って、このあとどうなるの?保険は出る?もう乗れないの?